1.防災担当者の意識の変化

こんにちは、ブルー・オーシャン沖縄の崎山です。

当社では、災害時の安否確認をクラウドから一斉に行う「グラスフォン」というシステムを自社製品として全国に展開しています。

これは、役所・庁舎が被災し、電源が喪失した状況でも、インターネットがつながる場所から数百、数千の安否確認対象者へ電話をかけ、ボタンによる安否確認を集計するもので、スマホやメールを使わないお年寄りでも家庭の固定電話で使えることから、提案先である役所・役場から高い評価をいただいています。

システム普及の活動として、日本全国の様々な地方へ出向き、役所の防災担当者へシステムの提案や防災に関する意見交換を行っていますが、3年前と現在で明らかに防災担当者の意識が変わっていることを日々感じています。

その変化は、西日本豪雨災害や大阪での大地震、台風被害、北海道胆振東部地震などの経験を経た結果だと思っています。

 

2.「公助の限界」とは

防災対応については、自分で自分の身を守る「自助」、地域同士で助け合う「共助」、行政・消防・警察など公的機関で助ける「公助」と、主に3つの種別に分かれます。

そして、減災のセオリーとしてこのような言葉があります。「自助7割・共助2割・公助1割」つまり、役所が防災関連のシステムを何億もかけて構築しても、地域の減災には1割しか役に立たないということです。

それでも一昔前はどの役所も右へ倣え、で、自治体が整備すべきシステムはこれだ、と言わんばかりに大きな予算をかけて大規模な防災システムを整備し続けてきました。ある意味、思考停止状態が永く続いていたのかもしれません。

ところが前述のように相次ぐ天災を前に、いよいよ次のようなキーワードが顕在化したと思います。

「公助の限界」

最近、役所の防災担当はそれを踏まえて意見を言うことが多くなっています。つまり、システム化しておけば良いだろうという思考停止状態から脱却し、「減災のために自治体は何をすべきか」というテーマに本気になってきているように感じます。

西日本豪雨災害では、ハザードマップで予測されている通りの大規模な水害が発生しました。

ところが、そのハザードマップで危険であると言われていたある地域の方々は避難をせず、多くの犠牲者が出ました。

公助はハザードマップを作るところまでしかできません。
避難する、しないの判断は結局個人の判断に委ねられます。

 

3.災害発生時の「バイアス」という大きな課題

しかしながら、人間には願望を思い込みにつなげる生理現象があります。これをバイアスと言います。

災害の際、いよいよ自分の身に危険が及んだまさにその時、人間の脳に「正常性バイアス」というものが働きます。

「自分は大丈夫だろう」と思い込んでしまうのです。

さらに「集団同調性バイアス」という思考が働き、「お隣さんも逃げていないし自分も大丈夫だろう」と思い込んでしまうのです。

どれだけ大規模な予算をかけて災害情報伝達方法を多様化・多元化しても、人間個人個人のバイアスといったフィルターは情報を一瞬にして無力化し、無価値、無意味なものにしてしまうのです。

(「公助の限界と共助の強化(2)」に続く)