1. 役所主体は難しい

こんにちは、ブルー・オーシャン沖縄の崎山です。

さて、私たちは2015年から竹富町様の移住定住促進事業をお手伝いしています。この移住定住促進という取り組みは国が推進する地方創生の一環として、昨今日本全国の地方自治体が移住イベントや相談会などを中心に力を入れています。例えば、日本最大級の移住促進イベント「ふるさと回帰フェア」には約370もの自治体が参加しています。

中には移住促進というよりも “おらが村のPR” といった様相の自治体もありますが、IターンやUターンに関心を持つ人々が各自治体のブースで移住相談している姿は、まさにブース担当の方も含め真剣そのものです。

ほとんどのブースでは役所の担当者が対応をしており、懇切丁寧に地域の良さをアピールしながら、移住に関する様々なアドバイスを行っています。
どの移住希望者も、ある程度目星をつけた自治体のブースで仕事、住まい、地域性などを中心に質問をして回るという流れになりますが、全体的に各論には進まない雰囲気で、例えて言えばレコード屋さんで様々なアルバムのジャケットを眺める、という感じに近いと思います。

しかし言うまでもなく、移住は自分の人生の中の大きなイベントになりますので、当然 ”ジャケ買い” のように軽い気持ちでは決断できません。

ブースを訪ねた方々は、自分が住んだ場合をイメージして相談をしますが、役所担当者の場合はその情報を提供するところまでの対応となります。あとは希望者が自分自身でさらに細かい情報を集め、また、実際にその地域に行って下調べをし、それら過程を経て初めて移住そのものが現実化していきます。

さて、この理屈で考えると、いま住んでいる場所と移住希望先が離れていれば離れているほど、移住の実現が難しいことがわかると思います。例えば、現地の下見や下調べにかかる費用として、電車賃往復3,000円の場合もあれば飛行機で5万かかるという場合もあります。

沖縄県のように本土から離れた場所だと、下見というよりもはや旅行の域と言えます。つまり、遠隔地域が本気で移住促進を推し進めるのであれば、まず初めにこのハードルを超える必要があります。そして、相談イベント後、個別相談電話やメールでのやりとりを何日も続け、いよいよ移住が具体化した場合に実際に現地に来てもらいます。その際、”いかに短い滞在時間の中で下見と移住の現実性を結びつけるか” が移住支援マネジメントのキモであり、最も重要なプロセスと言えます。

 

2. For AllではなくFor You

移住促進を進める自治体の人口はそもそも少なく、かつ減少傾向にあります。人口数万人の都市と違い、数百、数千の人口でひとつの行政区を形成しているわけですから、その地域がチームそのものと言っても差し支えないと思います。

つまり、少数精鋭のチームで地方創生を推進していくわけです。最近では「地域おこし協力隊」がまさにプロ野球の助っ人外国人のようながんばりを見せ、様々な地域で活躍しています。そういう意味では移住者による地域活性化の基盤は整っているのです。

私は移住促進推進を民間事業者として受託している立場ですので、かなり大胆に、まるでプロ野球のスカウトのように移住希望者と対話をします(さっきから例え話がプロ野球に偏ってしまい申し訳ありません)。

島暮らしに興味がある人に島の魅力を伝えるのと同時に、島に合っている人、島に来てもらいたい人を探しているのです。これは大変属人的な業務と言えますが、属人化を畏れていたら移住促進は絵に描いた餅になってしまいます。

最近では、7月に大阪で開催された移住イベントにおいて竹富町ブースに来た27歳の青年が波照間島へ移住することが決まりました。彼は今月(10月)下旬に移住完了の予定です。また、西表島への理解が深く、島のために地域のしきたりに則って祭や習わしなどの伝統文化を継承してくれそうな若い夫婦が、移住に向けて具体的な準備を始めています。

「誰でも島に来てください」では、「住んでみたらこんなはずじゃなかった」といったミスマッチを生み、定住率の悪化に繋がりかねません。また、島のコミュニティに合わない、島のしきたりを守らない、といった方の移住を手伝った場合、地元に人々から私どもが進める移住促進支援の取り組み自体に厳しい目が向けられます。このように、移住促進を ”広くみんなに” ではなく ”来てほしい人” にフォーカスし、各論で進めていくことが重要であることは、この4年で特に身に沁みて理解できたところです。

 

3. 移住の自走サイクルが最終目標

いま私どもが行っている移住定住支援は、ひとつのサイクルを回すためのスターターのような業務になります。現在竹富町では3年前に移住してきた方が移住コンシェルジュとなっているのですが、このように “移住者が移住者を呼ぶ“ という移住促進のエコシステムが島に浸透してほしいと考えていますし、他のいろいろな離島のモデルケースになれば、との想いを持って日々対応させて頂いています。