こんにちは、地方創生担当の安田です。

私たちブルー・オーシャン沖縄が地方創生事業をスタートして、2025年でちょうど10年になります。

そこで今回私は当事業の責任者である崎山にインタビューを行い、事業を通じて実現したいこと、始めたきっかけや苦労したこと、今後の展望など広く話を聞きました。ぜひご一読ください。

― 離島テレワークを始めたきっかけを教えてください。

2015年に当時総務省大臣だった高市早苗さんの肝いりで、ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業という公募が出ました。

私は当時、テレワークという言葉に対して、離れて仕事をすること、くらいの認識でしたが、離島の課題解決に有効な手段かもしれないと思い、応募して採択されました。そこから足かけ10年で現在に至るという感じです。
 
― 離島の課題とはなんですか?

私が深く関わっている竹富町という町があります。西表島や竹富島など9つの有人島で構成されている大変ユニークな行政区です。

その町で、ある年に一気に人口が減少したということがありました。

それは、リーマンショックによる観光客の激減で、観光業に携わっていた移住者がごっそり島外に転出したんですね。
 
― そんなことがあったとは知りませんでした。

コロナ禍で飲食店が苦しんだように、自分たちがどんなに努力しても外的要因により立ち行かなくなることもあります。リーマンショックで竹富町はそういう危機に陥りましたが、離島振興で最優先されるのは、人口を減らさないということです。

そう考えると、観光など単一の基幹産業に頼るのはリスクが高いと思い、新しい産業をテレワークで創れるのではと応募しました。
 
― どのような業務を実証したのでしょうか?

東京の大手コンタクトセンターの、ITに関わる一次対応窓口を西表島の方で請ける体制を構築しました。オペレーターは7名輩出し、業務にあたりました。
 
― いまその体制はどうなっていますか?

7名のオペレーターは全員辞めてしまいました。この実証で私自身とても大きな気づきがあり、それを今日のアイランドコネクト沖縄の運営に活かしています。
 
― なぜみなさん辞めてしまったのでしょうか?

オペレーターのほとんどは島に移住した方でした、コンタクトセンターでの窓口業務は東京など都会の仕事と変わりません。報酬も東京の水準です。

ところが、せっかく島に移住したのに、東京と同じ感覚で働くのは自身が望んでいる暮らし方ではない、という意見が大半でした。

これには大変衝撃を受けましたし、なぜそうなったかという本質的な課題を知ることになったのです。

― その本質的な課題とはなんでしょうか?

まず。我々が仕事を持ってきたら島の人に感謝されるだろう、報酬が高ければ島の人が喜ぶだろうという、なんというか、私自身のおこがましさ、厚かましさ、驕りを強く反省しました。

離島に住んでいる人には都会とは違う価値観がある、という前提が当時はすっかり欠落していたと思います。
 
― その後、運用方針を変えたのでしょうか?

はい、がらりと変えました。都会から仕事を持ってきて、育成して、管理してというのは変わらない部分ですが、一般的な事業所とはまるで違うコンセプトにしようと思いました。

― 具体的にはどのようなことでしょうか?

まず、一般的な事業所にはその事業所が求めるスキルセット、マインドセットを持たなければなりませんので、面接をして採用をします。

そして、運用の中で改善をしていき、その事業者が競争力で優位に立つようにしますが、アイランドコネクト沖縄では事業所ではなくプラットフォームです。

いろんな考えを持ったいろんな属性の人たちが、自分の生活に合わせて仕事をできますし、一般の企業のように、マインド研修などで意思の統一を図るといったことはしません。

個性がバラバラな人たちが、ルールに則った仕事をし、それを事務局で整えて納品するというルーチンです。
 
― ということは、人間関係については特に気にしていないのでしょうか?

はい、チームワークなど、一般的な事業所にある概念は排除しています。

通常、チームワークとは生産性を上げるための手段ですが、それは、ある程度同じようなメンバーでこの先も続けていくということが前提になります。

アイランドコネクト沖縄がプラットフォームと謳っているのは、働く場所そのものを提供していて、その中で働く人はどんどん入れ替わっても良いという設計になっているからです。

とはいえ、あまりに周りに迷惑をかけたり、著しくコミュニケーションが困難な方は退会していただくこともありますが、そうでない限り、誰でも働ける場、多様な人たちの生活を支える場、としています。
 
― 一般的な企業のように、横や縦の繋がりや、組織然としたものは排除しているんですか?

はい、好きな時間に好きな量を働き、勤務態度は人それぞれ、ノルマも課さず個人事業主が集まるプラットフォームが離島にはマッチしていると考えてそのようにしています。

ワーカー同士が個人的に仲良くなるのは良いと思いますが、事務局はそこに関与しません。

いわば、事業所の運用に関するセオリーやあるべき論がないので、社会人経験が豊富で、経験則で見る方には違和感があると思います。

しかしながら、離島で首都圏の企業から業務を受託し、一方で働きやすさを提供する最適解が今の運用方針となります。今後変わる可能性もありますが、現時点ではそのように考えています。
 
―報酬の相場を教えてもらえますか?

一般的なクラウドソーシングで非ITの場合、ほとんどが単価制ですが、私自身やってみても時給に換算すると1時間300円行くかどうかの相場です。

それでもその仕事を請ける人が増えているため、相場はどんどん下がっていく傾向にあります。

アイランドコネクト沖縄では、在宅は単価ですが、最も稼ぐ方で1時間2,000円という実績もあります。また、在宅を拠点型にしたモデルも宮古島市、石垣市、伊江村で展開中もしくは展開準備中ですが、そこは複数の業務を受託することにより、時給1,000円以上を確保するようにしています。
 
―最後に今後の展望を教えてください。

宮古島、石垣島、伊江島の拠点を活かして、高付加価値で地元のためになる業務を創出したいです。

事業運営者と働く人たちの関係性というのは一般の事業所に比べかなりユニークですし、ややもすれば人間関係が希薄と思われるかもしれません。しかし、ひとつの新しい就労基盤として、特に都会以外の場所で展開していくと、そこに住む人たちの暮らしやすさに繋がると思います。

その意味で、沖縄の離島以外でも、このような考え方を軸とするテレワークプラットフォームを展開したいです。
 
― 今回改めて話を聞き、さまざまな経緯を経て現在のスタイルが形成されたことがよく理解できました。今日はありがとうございました。

ありがとうございました。