こんにちは、ブルー・オーシャン沖縄の崎山です。いま私は業務を通して沖縄県八重山郡竹富町の移住者支援に携わっているのですが、その現場を通じて感じたことや現場の取り組みなどをこのブログで皆さんにお伝えできればと思っています。よろしくお願いいたします。

1. ハード・ソフト面で大きく改善した沖縄の離島

第一回となる今回は「離島におけるICT導入の第一歩、そして本当のゴールとは?」というタイトルにしました。”離島をICTで活性化”、というテーマは沖縄ではよく目にするものなのですが、今回のブログでは実際に現場にいる私たちがどのような考えのもと、どんな点に気を配りながら業務を遂行しているのか、ナマの姿を少しご紹介したいと思います。

はじめに、沖縄県内の離島における暮らしはひと昔前まで「離島苦(島ちゃび)」と表され、品質の低い生活インフラや自然災害による農作物への被害、また、医療や福祉サービスの乏しさ等、枚挙に暇がないほどのネガティブな条件を抱えていたことをご存じでしょうか。

しかしながら昨今の離島振興策により、ハードからソフトまで、どの島においても充実した整備が施されつつあります。特に、好調な観光産業に係る整備は充実しており、ほとんどの離島では自治体が運営するフリーWi-Fiサービスも提供されるなど、他県の離島と比較しても沖縄の離島におけるハードおよびソフトの整備率の高さは群を抜いています。

2.「離島の地域活性化」には未だ多くの課題が

しかし「離島の地域活性化」という点にフォーカスすると、いまも変わらずさまざまな課題解決と成長戦略が求められていることがわかります。

まず離島の産業という側面においては、生活の経済基盤を単一の産業に偏らざるを得ない状況があります。島を支える基幹産業のほとんどが農業であったり、観光業であったり、いずれにしても人的リソースそのものが少ないため、就労の多様化等は困難な状況にあります。

さらにリスクという意味では、リーマンショックによる世界不況で沖縄県でも観光産業が大打撃を受けました。その際、人口減少が顕著に現れた島もありました。つまり、島が依存している産業は人口減のリスクと常に隣り合わせにあると言えます。農業についても、仮にパンデミックや大規模な自然災害等、人智の及ばない状況に陥った場合、それがそのまま人口減に繋がる可能性は高く、離島の活性化を目指す前にこのような慢性的課題をどのように解消していくかを充分に考える必要があります。

3. 沖縄の離島におけるICT導入の状況

次に離島で導入が進むICTの利活用に目を向けてみます。昨今、遠隔授業や遠隔医療の実証事業が続いていますが、それらは基本的には離島の課題解決による定住化の安定を目的としたものです。先述のフリーWi-Fiサービスは観光の利便性向上、ホスピタリティの向上を目的としています。

しかしながら、これら課題解決型ICT事業はなにかを生み出す基盤には成りえません。対処療法であり、一時(いっとき)の対策であり、眼前の障害を避けるものに過ぎません。つまり、ICTを活用することで何かを生み出す基盤が作られない限り、真の意味でのICTによる離島活性化には程遠いと言えます。

4. 「離島の活性化」が内包するジレンマ

また、離島の活性化という活動においては、離島だからこそのジレンマが生じます。例えば観光Wi-Fiを活用したマネタイズモデルや、ICTを活用した地元名産品の販路拡大といった提案や運営の話をする我々は、島に暮らす人々から見ると「経済活動にガツガツした人たち」として無粋な人間に映ってしまうこともあります。

というのも、「島に住む」ということ自体がある価値を内包しているケースも多々あるからです。離島では概ね都市部の生活と反対の方向に重きがおかれ、特に都市部の活発な経済活動にある種のアレルギーを持っている方も少なくありません。経済活動とは最終的にお金を稼ぐことに着地するので、私たち離島活性化を進めようとする側の説明もかなり神経を使ったものにならざるを得ないと言えます。

5. 離島におけるICT導入の第一歩、そして本当のゴールとは?

ただ、ICTを活用することで仮想的に市場が際限なく広がるという可能性に偽りはありません。あくまで「仮想的」であり、島に何万、何億という人が来るわけではありませんが、ICTの力を使い、島の暮らしを安定させる基盤として、敢えて「最低限の商売っ気を少しずつ島の人々に啓蒙すること」が離島のICT活性化の第一歩と言えます。

つまり、昨今の「目的化されたIT」ではなく「手段としてのIT」というゴールを明確にし、離島ならではの現実的な仮想基盤を構築することが離島活性化には重要であると考えています。

(次号に続く)